E-125



東日本大震災を忘れない
NEVER FORGETMemories of the Great East Japan Earthquake

地震津波観測網S-net/3.11伝承ロード




加 藤 良 一 2021年4月13日
  


■ 地震津波観測網S-net 
 東日本大震災から早や10年、まだ復興が十分でない地域もあるが、それとは別に地震と津波の発生をより早く正確に検知する技術も進んでいる。それがS-netと名付けられた日本海溝海底地震津波観測網である。
 このシステムは、地震計と水圧計が一体となった装置を海底ケーブルで接続し、日本海溝から千島海溝海域までの東日本太平洋沖に設置、リアルタイムに24時間連続で観測データを取得するもの。装置は150カ所に設置されており、ケーブル全長は約5,500kmになる。海溝型地震や直後の津波を直接検知し、迅速・確実な情報伝達で防災対策に貢献することが期待されており、平成28(2016)より一部運用を開始している。

観測網の全体概要(防災科学技術研究所より)


観測網の構成


 観測網は、房総沖、茨城・福島沖、宮城・岩手沖、三陸沖北部、釧路・青森沖の5か所の海域と日本海溝外側に設置されている。

 実際の観測装置が国立科学博物館企画展「東日本大震災から10年-あの日からの地震研究-」(令和3年39日~411)で展示されていた。この装置は内部が見えるようにくり抜いてある。


 展示会は、災害を風化させないため、当時の被害の状況を振り返るとともに、この10年間で地震調査研究が明らかにしたことや、社会に与えた影響などを紹介。また、国立科学博物館が行ってきた標本レスキュー活動や震災復興事業をはじめ、各地の復興の様子や被害の伝承についても展示していた。
 
標本レスキューとは聞きなれないことばだが、文字どおり貴重な標本を救い出すことである。東日本大震災では、被災した博物館などの社会教育施設の資料について、文化財レスキュー事業を通じて被災した動産文化財の保全と散逸防止が進められた。この時のレスキュー活動は、主として文化財関係が対象であったため、自然史系標本は、これとは別に全国的なレスキュー活動が展開された。

 災害にまつわる活動にはさまざまな側面があり、目に見えないところでそれぞれの専門家が地道に活動していることをあらためて知った。


■ 
3.11伝承ロード 現代の「奥の細道」のように ■
 3.11伝承ロード」とは東日本大震災の教訓を学ぶため、震災伝承施設ネットワークを活用して、防災に関するさまざまな取り組みや事業を行う活動のこと。東日本の500kmにおよぶ太平洋沿岸の被災地では、被災の実情や教訓を伝えてゆく施設の整備が進んでいる。これらを現代版「奥の細道」のように、「震災伝承施設」を登録し繋いでゆくものである。

 「震災伝承施設」は、①災害の教訓が理解できるもの、②災害時の防災に貢献できるもの、③災害の恐怖や自然の畏怖を理解できるもの、④災害における歴史的・学術的価値があるもの、⑤その他(災害の実情や教訓の伝承と認められるの)の5項目に基づいて、いずれか一つ以上に該当する施設を第1分類とし、そのうち公共交通機関が利用でき、近隣に駐車場があるなど訪問しやすい施設を第2分類、さらに第2分類のうち、案内員の配置など来訪者の理解を助けるようになっているものを第3分類としている。
 
第3分類には2020年7月時点で、八戸市みなと体験学習館(青森県八戸市)、田老町潮堤(岩手県宮古市)、東日本大震災津波伝承館(岩手県越前高田市)、震災遺構仙台市立荒浜小学校(宮城県仙台市)、気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館(宮城県気仙沼市)、アクアマリンふくしま(福島県いわき市)など43の施設がある。

   「教訓が、いのちを救う。」

 このような災害の苦しみを風化させない取り組みを生かせるかどうかは、一人ひとりの意識の持ち方にかかっている。備えあれば憂いなし…



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