<全日本合唱連盟70年史>から見る合唱界の今

       



                                        加 藤 良 一   
2017年8月2日




全日本合唱連盟から創立70周年記念誌が届きました。200頁にも及ぶ大部なもので、60周年からの「この10年」を総括しています。これまではB5版サイズでしたが、70周年はA4版と大きくなっています。
 国際交流事業や資料室の概要、支部・県連の略史、11に及ぶ各種事業の記録等々がまとめられており、貴重なアーカイブとして後々残るものです。

 昭和2年(1927)、全日本合唱連盟の前進である「国民音楽協会」が設立され、昭和23年(194811月に関東・東海・関西・西部の4支部を統括する形で「全日本合唱連盟」として発足しました。(因みに埼玉県合唱連盟は昭和32年(19579月に発足しましたので、今年9月で創立60周年となります。20183月に記念演奏会を企画しています。)

 この10年間における最も大きな変化は、平成24年(20124月にそれまでの社団法人から「一般社団法人」へ移行したことでしょうか。定款・諸規定の変更など組織運営上大きな変革が求められました。

一般社団法人とは「営利を目的としない」非営利団体です。つまり、利益分配しない、配当を出さない組織のことです。ただし、利益を出してはいけない、給与や報酬ももらってはいけないというわけではなく、非営利とは、事業で利益を出してはいけないのではなく、利益を出してもよいが、それを「分配(配当)してはいけない」ということです。)

 現在、全日本合唱連盟には、9支部(個人会員含む、東京は単独支部)合せて5,133団体が加盟しています。もっとも加盟団体が多かったのは平成23年(2011)の5,236団体でしたから、出入りはあったものの103団体(2%)の減少です。
 全日本合唱連盟に未加盟の団体数は正確には把握できませんが、市町村単位の独自の連盟も少なからずあり、そこに加盟している団体も相当数あると思います。それらの非加盟団体はヤマ感でいえば少なく見積もっても1,0002,000はあるのではないでしょうか。

支部

加盟団体

県連数

1

2

3

北海道

297

8

札幌138

旭川 39

帯広・釧路 24

東 北

516

6

福島153

岩手112

宮城105

関 東

1,380

9

埼玉344

神奈川302

千葉198

東 京

466

1

東京

 

 

中 部

580

7

愛知218

岐阜 78

長野 76

関 西

848

6

大阪307

兵庫209

京都136

中 国

307

5

広島103

山口 64

岡山 62

四 国

228

4

愛媛 70

香川・徳島 58

高知 42

九 州

511

8

福岡111

鹿児島 69

長崎 68

5,133

54

 

 

 

 
 埼玉は加盟総数344、東京の466に次ぐ2番目に大きな県です。ところで、全日本合唱連盟の支部の分け方は独特で、歴史的な背景が絡んでいるものと思われますが、たとえば、現在の関東支部は、北から新潟、群馬、栃木、茨城、埼玉、千葉、山梨、神奈川、静岡の9県で構成し、東京は外れています。とても不思議な区分けですね。ただし、これら9県は、辛うじてすべてが地続きですからなんとか「関東支部」として括られていてもよいのかなというところでしょうか。

 このことについては、別のところ↓でもすこし書いてあります。ご参考にまでにご覧ください。
    「関東の男声合唱事情」

 
 70年史では触れていません…が、ちょっと横道に逸れてみます。
 合唱連盟未加盟の理由にはおそらく加盟費の負担があげられると思います。とくに小さな合唱団ではこの問題は避けられないようです。県連の加盟費には、県連・支部・全日本への加盟費に加えて、機関誌「ハーモニー」(年4回発行)の購入費が含まれています。この「ハーモニー」(@700円)は、本来加盟合唱団のメンバー全員が購入するよう全日本では希望していますが、実態はなかなかそこまでいっていません。

 加盟費は、一般・大学等を例に挙げれば以下のような金額になっています。各県連のホームページからランダムに拾いましたが、かなりのバラツキがあります。県連によっては加盟費を規約で明記していないところもありますし、そもそも規約を掲示していない県連もあります。おおむね「ハーモニー」購入費をどう扱うかでちがいが出ているのではないかと思います。
 一般に合唱祭やコンクールなどの事業ごとに別途参加費を徴収しますが、それですべてが賄えない場合もあります。諸般の事情を考慮すると、加盟費は開催事業の規模や回数にある程度比例して大きくなる費用と考えてもよいでしょう。したがって、金額だけで判断しきれない面があります。

県連

加盟費(計)

「ハーモニー」購入費

函館

5,000

4,900

9,900

福島

 

 

20,000

埼玉

 

 

23,000

東京

 

 

15,000

大阪

 

 

12,000

高知

10,000

12,700

22,700

佐賀

9,000

7,200

16,200


 
 創立60周年以降、この10年のあいだに新たに発足した事業に「全日本男声合唱フェスティバル」があります。2010年宮崎県で旗揚げして以来、福島、岡山、京都、高知、小樽と開催しています。2018年の第7回は静岡県伊豆の国市で予定しています。しかし、下の写真の記事にもあるように、出演団体の固定化、開催地候補決定の難化、財政面の課題など厳しい状況に直面しています。果たしてどうなることでしょうか。



      

         音楽・合唱コーナーTOPへ       HOME PAGEへ

M-145