テニス、桜、そしてなぜか手拍子第九



加 藤 良 一

 2005年4月15日



 今年の桜は、開花時期が近づいた頃から寒暖の差が激しくなり、いつ花を開いたものか迷っているようだったが、急に暖かくなった4月7日あたりから一気に満開となった。
 東京あたりからも花見客が大勢やってくる幸手の名勝権現堂の桜堤は、開花がずれこんだためやむなく桜まつりを延長することになった。埼玉にかぎらず花見の予定が狂った地方は多かったことだろう。

 そんなうららかな4月10日の日曜、栗橋テニスクラブでは、ういんぶる丼テニスクラブを南栗橋テニスコートに招いて親善テニス大会を開いた。ういんぶる丼TCは、栗橋の隣り町、鷲宮町が本拠地のクラブで、JR宇都宮線東鷲宮駅前に広がる大きなマンションや分譲住宅に住む人たちが中心となっている。

 双方合せて30人ほどが、女子、男子、ミックスのダブルスすべての種目にわたって、珍プレー、好プレー、凡プレーを和気藹々のなかで繰りひろげた。今回は、面倒なので対戦相手同士のレベル合せをほとんどやらずに、どんどんドローを組んだ玉石混交となった。対戦相手に不足を感じた者、その前にペア自体が内心気に入らない者など、思うようにはいかないが、これも団体親善戦の定め。相手が弱すぎるときは、つい手加減してしまうものだが、それが思わぬ敗戦につながったりもする。対戦成績は、15対20でういんぶる丼TCの勝利。まずはお客様に花を持たせることができた(?!)。

 アフターテニスは、お目当て、満開の桜を()でながらのお花見。長屋の花見よろしく、発泡酒はビールのつもり、ナポレオンは言わずもがなの下町もの、さすがにタクアンを卵焼きに見立てることはなく、おつまみは本物でひと安心。桜の木の下、敵味方なく車座になり、ひとしきり試合の品評会。試合の結果などどうでもよいとばかりのそぶりを見せながら、内心リベンジを期す負け越した御仁も、いつしかほろ酔いとなればまさに敗北の屈辱も雲散霧消。


 酔うほどに歌がほしくなるのはいつの世もおなじ。カラオケ自慢も装置がなけりゃ得意の喉を披露できず、ア・カペラじゃカッコがつかない。いつもは、カラオケ画面ばかり睨んで歌っているから、画面がないと肝心の歌詞が出てこない。それでもなんとか思い出しだし、お手を拝借。昔の宴会は手拍子で歌える歌がたくさんあったものだが、いまどきはなかなかそうもいかない。会長一曲やれ、クラシックでもいいぞとお鉢が回ってくる。はじめは何回か逃げ回ってはみるが、しょうがない、それじゃベートーヴェンさんのサワリだけでもやりましょう。

 ご存知、交響曲第九番、第四楽章の合唱のさわり。

 ♪ 風呂()で しぇー寝る げっ照る 糞犬(フンケン) 徒歩(トホ)てる ()うす エリー()うむ。
  ビヤ べ()れー点 保癒(ホイ)える()るんけん ひん無理っしぇ だいん (ハイ)りひつむ。
  台寝(ダイネル) 津会(ツア)うベル ビンでん (ビー)でる バス出い(ディ) (モー)で (シュ)取れん 下駄(ゲタ)いると。
  あーれ 面しぇん ベル出ん 武流(ブリュ)ーだ 棒 だいん (ザン)ふてる 婦理由(フリュー)ゲル ()
いると

 この編曲ならぬ編詩(?)は、“台寝から下駄いると”までは詩人の川崎洋さんの手になるものだが、その前後を私がつなげてみた。ところで、おどろいたことに、この曲、手拍子を叩くとなんともそれらしく宴会の歌に早変わり。8分の6拍子がいつのまにやら2拍子になっていた。

 日暮れてライトに照らしだされた幻想的な夜桜。春風に吹かれて舞い散る桜吹雪、盃のなかにも花びらが舞い降りてくる。この風情があるかぎり、日本の新年度は外国のように9月にはできないだろうと思わざるをえない。

 世の中は三日見ぬ間の桜かな。
 酒なくてなんのおのれが桜かな。花の色は移りにけりないたずらにわが身世にふる眺めせし間に。
 

 

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