テニスのポイントは、サーバー側から先にコールします。もし最初にサーバーがポイントを取れば「ラブ・フィフティーン」すなわち<0−15>となります。1回の得点は15点。ちなみにゼロのことはラブと呼びます。テニスにさほど詳しくない方でもこのことはご存知かもしれないですが…。
続いてレシーバーがポイントを取ると「フィフティーン・オール」<15−15>と並びます。さらに、「サーティ・フィフティーン」<30−15>となり、ここでサーバーがポイントを取ると「フォーティ・フィフティーン」<40−15>とゲームポイントを迎えます。しかし、2本目までは15点ずつだったのに、3本目は10点しか加算されません。そして、サーバーがゲームポイントを取ったら果たして何点加算されるのかはどこにも書かれていないのです。10点だろうが15点だろうが、4ポイントを先取すればそのゲームは勝ちなので何点でもかまわないということなのでしょうか。いかにもハンパな得点進行です。不可解ですが、歴史的にずっとそういうものだとして広く受け入れられているのです。
ところで余談ですが、素人のテニス愛好家の中には、「フィフティーン」<15>を「フィフティ」<50>と呼ぶ人がけっこういます。日本人は英語の語尾とくに‘n’や‘m’をきっちり言わない傾向があるのでなんとなく尻切れトンボの発音をしてしまうにちがいないと温かく見守っていますが、ネット上のそれらしきサイトでも「フィフティ」と書いて憚らないのには閉口します。
うるさいことをいえば、いきなり「フィフティ・ラブ」<50−0>とコールされたんじゃ、もうゲームセットかよと思ってしまいます(‘;’)。
15、30、40の次にもし50があったら「フィフティーン」と「フィフティ」を明確にいわけなければ大混乱になりますね。それがないので「フィフティ」とコールしても誰も怪しまないのです。
そして、<40−40>になると今度は「フォーティ・オール」とは呼ばず「デュース」に変ります。もっとも、ノンアドヴァンテージ方式では「フォーティ・オール」と呼び、その後は先に得点したほうがそのゲームを制します。つまりサドンデス方式にして時間短縮を図るやり方です。
いきなりサドンデスではなく中間的なセミアドヴァンテージ方式では、1回だけ「デュース」をやりそれでも決着が付かない場合に「フォーティ・オール」としてサドンデスにします。ノンアドやセミアドでは、レシーブを誰が受けるかレシーブ側が選択できます。ただし、ミックス・ダブルスでは男性のサーブは男性が受け、女性のサーブは女性が受けるという麗しい不文律があります。
テニスの起源については諸説あるようですが、いずれにせよヨーロッパ発祥のスポーツですから日本人には理解不能の部分が多々あります。中世のヨーロッパでは古代バビロニア人が考案した60進法が中心でした。現代にも時間(時計)の数え方にしっかり残っています。そういえば、子どもの頃、時計の読み方を覚えるのに苦労させられたことを思い出します。
◆ポイントの数え方について、時計の文字盤説というものがあります。
60分を四等分すると15分間隔で1クォーターずつとなります。4クォーターを獲得するとちょうど一周してゲームが終わります。これは視覚的にもわかりやすいですね。その昔、実際に時計の文字盤を使ってポイントを表示していたこともあるようです。
もし文字盤どおりに進めるとしたら、15、30、45となるべきですが、どうして45ではなく40となったかが疑問です。もし文字盤どおり45とコールするとどうなるでしょうか。「フィフティーン・フォーティファイブ」などと音節が増えて長ったらしくなってしまいます。実際に口にしてみると語呂が悪いしリズムも悪い。そこで、5を省略し40とコールすればすっきりしませんか。私はこの説が有力ではないかと思っています。
この説にはもう一つおまけがあります。文字盤の針を15分ずつ進めてゆくとデュースの表示ができなくなってしまいます。そこで、ハーフの30まではクォーターの15で進め、残るハーフを3等分して40、50、60とし、「フォーティ・オール」をデュースにし、「50」でアドヴァンテージを示し、デュース・アゲインで針を40に戻すという考え方です。40から50、60と2ポイント続けて取れば勝利です。これはなかなか良いアイデアだと思いませんか。
他にもいろいろな説があります。たとえば、40という数字はキリスト教圏では「白黒をつける」という意味があり、英語の検疫「クワランティン」(quarantine)は、ヴェネチアでペストが流行したときに外国から来た船は40日間上陸を許可せず、病気に罹っていないことを確認するという特別の意味を持っているといいます。あるいは、修道院の生活時間が15分単位だったのを基本とした説とか、フランスの昔の貨幣ドゥニエ銅貨が60スウの四分の一すなわち15スウで、1ポイント獲得するごとに銅貨がやりとりされたという説などなど。しかし、いずれも定説にはなっていないようです。
テニスは歴史が古いですから、われわれには理解できないことがたくさんあります。
対戦相手がとれないところばかり狙って意地悪く打つのをなぜか「サービス」?といったりします。1877年に始まった当初のウィンブルドン大会では、アンダーハンドでサーブしていたそうです。つまり、相手が打ちやすいように優しく「サービス」していました。「サービス」とは、奉仕とか世話するという意味ですから…。
当時はミックス・ダブルスが中心だったので、レディに対して優しくそっとボールを差し上げないとジェントルマンとは呼ばれなかったのです。その後、懸賞金が掛かるようになってから目の色が変わっていったんでしょうね。
また、別の説では、試合開始前に司祭がお祈りをしてからボールをコートに投げ入れたというのもあります。それはそれとして、いい年した大人がちっちゃなボールを追いかけ回して楽しんでいるんですから、なんとも平和な話しです。
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