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大きく変貌するコロナ禍のテニス

 加 藤 良 一
2020年8月26日
 


 新型コロナウイルス感染防止対策が叫ばれる中、ニューヨークで831日から開幕する全米オープンテニス2020の前哨戦であるウェスタン&サザンオープンを観て、いつもの試合と様子が一変しているのに驚いた。そこは無観客、アンパイアはじめ関係者も最少人数に絞ったシンプルなものになっていた。

 大阪なおみの初戦の相手は、2年前の全米オープンで初優勝した時のコーチ、サーシャが指導するヤストレムスカだったが、難なく撃破した。いっぽう、錦織圭はコロナ陽性で残念ながら不参加である。


◆審判は主審一人だけ!
 一番大きな変更点は、なんといっても主審(チェアアンパイア)以外に線審(ラインアンパイア)がコートに一人もいないことだ。いるのはボールパーソンだけ、それも以前の半分の人数に減っている。。主審のマイクにはプラスチックの袋が掛けられていた。

 そもそもテニスは審判がもっとも多いスポーツだった。昔のルールでは、シングルスは、2人のプレイヤーに対して、主審(正審・コールアンパイア)1人、線審(ラインズマン)8人、ネットアンパイア1人、フットフォールト・ジャッジ2人の総勢12人もいた。それが次第にセンサーなどを駆使して省人化が進み、今ではほとんどが機械に置き替わり、とうとう主審だけとなってしまった。

◆プレイヤーはなんでも自分でやらねばならない
 今回のウェスタン&サザンオープンでは、プレイヤーはマスク着用でコートに入場してくる。さすがにゲームでは外すが、ほとんど相手と接触することも近づくこともないから問題なくぃ。ボールパーソンは当然終始マスクを着用しボール以外には手を触れない。従って、試合中に使う汗拭き用のタオルも決められた場所にプレイヤー自身が置き、使用後は自分で戻す。但し、以前と変わらないのがサービス時のボール交換。気に入ったボールを選ぶために何個も要求し交換するのはよくあること。その昔はサービス時のボールは2個受け取り、いちいち交換することもなくそのまま使ったものだ。流れがスムーズだった。
 ゲームが終わり、コートチェンジでベンチに戻っても飲み物は自分で取りに行かねばならない。以前はボールパーソンがあれこれと世話をしていたが、それも一切なし。替えのラケットを取り出した袋も自分で始末する。ボールパーソンがこき使われることがなくなったのは見ていて気持ちが良い。そして、ゲームセットとなるとこれまでなら両者ネットに歩み寄り、握手して健闘を称え合うところだが、コロナ禍のテニスではラケットを差し出して触れ合うだけ。

◆ジャッジは機械がやる
 打球の判定はセンサーが行い、「アウト」のコールはスピーカーから流れる。従来は微妙な判定に対してホークアイ(ソニー製)を使った「チャレンジ・システム」があったが、今回はもともと機械が判定しているからチャレンジは受け付けない。仮にプレイヤーに不満があっても苦情を言えない。機械にジャッジを任せることが前提の試合、チャレンジしても同じこと、それ以上やれることはない。

◆プレイヤーは孤独 自らを鼓舞してプレイするしかない…
 テニスは、サービスを打つ時の観客の動きや声を極端に嫌うスポーツである。シーンと静まり返ったコートで誰にも邪魔されることなくサービスできるのはとても良い。しかし、スーパーショットを放ちガッツポーズをしても観客席からは反応なし、あるのはコーチ陣の小さな拍手のみ。
 うまくいかないときにも観客の励ましの応援などない。自らを奮い立たせて闘うしかなくなった。新型コロナウイルスのせいとはいえ、ずいぶん様変わりしたものである。








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