11月17日付で出された官報資料版に 「平成16年版 厚生労働白書のあらまし」
と題する報告が掲載されている。厚労省がさきに出した厚生労働白書の解説をしたものである。「現代生活を取り巻く健康リスク」を多面的に分析し、将来展望などを述べている。
「我が国の20世紀の死亡に関する疫学的変遷」
(官報は転載自由)のグラフをみると、100年前は死因の半分を感染症が占めており、とにかく防疫対策が最大の課題だったことがよくわかる。グラフの1944年から1946年のあいだが切れているのは、第二次世界大戦によるためであろう。
図をみると、戦後の1950年代から死因の構成比が大きく変わりはじめ、感染症に代わって生活習慣病といわれるがんや脳血管疾患が急増し、現在ではちょうど100年前の状況と逆転しているのがよくわかる。そして、2004年の健康リスクに関する意識調査によれば、感染症にリスクを感じる人は10%だが、生活習慣には55%の人がリスクを感じているという。
最近話題の感染症には、SARS、ペットからのペスト感染、AIDS、死亡者の8割を高齢者が占めるインフルエンザ、一時激減したがふたたび増えはじめた結核などがある。これらの中でまだ予防できない感染症もあるが、ワクチンがあるものはできるだけ受けておくに越したことはない。また、性感染症とよばれるAIDSのようなものも、一種の生活習慣みたいなものだろうから、自己責任でなんとでもなる。ただし、手術の際に受けた輸血や汚染された血液製剤の投与で感染するAIDSは同じAIDSであっても性感染症とはいわない。
健康は、公害や交通事故などの外から受けるものを除けば、いつの時代にあっても自分で守るものだが、心の病気は本人だけではどうにもならない部分があり、予防や治療もかんたんではない。たとえば、以前精神分裂症と呼ばれていた統合失調症では、患者生来の素因がなんらかの外因(主に対人関係か)で刺激され、その結果発症するケースが多いと聞く。また、素因などなくとも置かれた環境しだいで発症する場合も相当ある。
「生涯を通じれば五人に一人が精神疾患と診断され得るという調査結果もある」 し、自殺は 「バブル崩壊後は、五十歳代の男性で最も高くなっている」
という。にもかかわらず、女性の自殺者はさほど増えていない。遅ればせながら女性の耐ストレス性について研究をする必要がありそうだ。世のか弱き亭主関白のために。