M-144






6回 全日本男声合唱フェスティバル in 小樽

The 6th JCA Men’s Chorus Festival in OTARU



 



2017721




 
平成29年(201778日~9
小樽市民会館・小樽市公会堂
合同合唱
 清水敬一教室> 指揮:清水敬一 ピアノ:小﨑ゆかり
   男声合唱組曲『海鳥の詩』から オロロン鳥/エトピリカ/海鵜
   作詩:更科源蔵/作曲:廣瀬量平

 広瀬康夫教室> 指揮:広瀬康夫
   男声合唱組曲『雪明かりの路』から 春を待つ/月夜を歩く/夜回り/雪夜
   作詩:伊藤 整/作曲:多田武彦


 今年の開催地小樽市は、詩人・伊藤整に因んだイベント「小樽雪あかりの路」を毎年冬に開いています。雪あかりの路は、無数のキャンドルが古い街並みを照らしだす幻想的なイベントです。機会があればと思いつつ残念ながら冬にはまだ訪れたことがありません。雪の小樽運河の水面に浮く玉キャンドルなど温かなあかりで冬の北海道が楽しめるようです。
 この大会のキャッチフレーズは「冬を味わう、夏」。まさに小樽は冬こそ魅力的な雰囲気を醸し出すのでしょう。真夏にも冬を満喫できる、そんな小樽に心惹かれて馳せ参じました。ところが、今年の夏は北海道では120年振りというほどの猛暑に見舞われてしまいました。避暑地に出向くつもりでいたのが、残念ながらやや期待外れでした。それでも、大会終了後仲間と道南を周遊して北海道の自然に触れることができたのはラッキーでした。



合同合唱 指揮:広瀬康夫  男声合唱組曲『雪明かりの路』


 
清水敬一先生                  広瀬康夫先生


 今回の合同合唱曲、廣瀬量平作曲『海鳥の詩』と多田武彦作曲『雪明りの路』は、いずれも北海道を歌ったものですが、とくに『雪明りの路』はさきほど述べたように小樽とは密接な縁があります。

 小樽は、海運が盛んで、函館についで古くから開かれた港町でした。札幌が中心になる前は北海道の経済を担っていました。小樽を味わいたくて運河クルーズに乗りました。この運河は日本では珍しい「埋め立て式」で、内陸を掘った運河とちがい、海岸線を埋め立て作られています。今ではレストランやカフェに衣替えした大きくて古い倉庫群のあいだを縫って舟は進みます。運河は海にもつながっています。あちこちにウミネコやカモメが飛び交っています。
 運河の近くにある小樽文学館には、プロレタリア文学の小林多喜二や小説家、詩人、文芸評論家、翻訳家である伊藤整をはじめ小樽につながりのある著名な文学者に因んだ展示物が並んでいます。



     
小樽文学館に再現された伊藤整の仕事場と詩集「雪明りの路」(大正15年12月復刻版)


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 男声合唱団Vive la Compagnieヴィヴ・ラ・コンパニーは、3回岡山大会、第4回京都大会、第5回高知大会に続き4度目の参加となりました。(個人的には第1回から参加していますので、全6回連続出場となりました。)
 ヴィヴ・ラ・コンパニーは、男声合唱プロジェクトYARO(埼玉県下の男声合唱5団体の集まり)の有志による合唱団です。今回の団長は、男声合唱団メンネルA.E.C.百崎直也さん、指揮者は埼玉県合唱連盟常務理事・南めぐみさんでした。


交流会で多田武彦作曲「雨後」を歌うヴィヴ・ラ・コンパニーの面々
指揮は須田信男(埼玉県合唱連盟常務理事)


【ヴィヴ・ラ・コンパニー出演メンバー(19名)】
・指揮:  南めぐみ(埼玉県合唱連盟常務理事)

トップテナー 宇佐美平和(イ 鳥海勝利(イ 正木一弘(イ 高石克巳(ポ    
セカンドテナー 百崎直也(メ 福島 洋(メ 加藤良一(グ 横山 努(イ 細田 潤(イ  
バリトン 伊藤博行(ポ 須田信男(メ 中村壽宏(メ 望月克美(イ    
ベース 武藤 (イ 横山岩雄(グ 関根俊明(メ 木下 (メ 新 健治(メ 岸村小太郎(ド

     (イ:イル・カンパニーレ、 メ:メンネルA.E.C.、 グ:コール・グランツ、 ポ:あんさんぶる「ポパイ」、 ド:ドン・キホーテ)


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中村浩・大会副実行委員長(左)と清水敬一先生


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 今年の参加団体は、場所が北海道ということも影響したのか17団体とやや少なめでした。北海道支部9、東北支部1、関東支部1、東京支部1、関西支部3、中国支部2という分布でした。中部支部、四国支部、九州支部からの参加はありませんでした。単独の合唱団で遠方へ演奏旅行するのはそれなりに困難が伴います。このあたりが全国大会の悩ましいところです。次回は静岡県伊豆の国市で行われますが、果たしてどうなるでしょうか。

出演団体(出演順)
1. 北海道  小樽商科大学グリークラブ札幌OB
2. 北海道  男声合唱団ススキーノ
3. 北海道  Men’s Vocal Ensemble A Cahel
4. 兵庫県  男声合唱団コール・セコインデ
5. 北海道  北海道大学合唱団
6. 北海道  北海学園大学グリークラブOB
7. 北海道  男声合唱団コール・ブリューデル
8. 福島県  いわきメンネルコール
9. 京都府  合唱団京都エコー
10. 兵庫県  STARGAZER
11. 岡山県  コール・ロチェアーノ
12. 島根県  男声合唱団FREIE KUNST
13. 北海道  函館男声合唱団
14. 埼玉県  男声合唱団Vive La Compagnie
15. 東京都  アンサンブルじい×ANGUSTA
16. 北海道  どさんコラリアーズ
17. 北海道  小樽市役所グリー・北海道男声合唱団


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 参考までに全日本合唱連盟の支部組織を以下に示します。いわゆる行政上の区分とは一部でかなり異なっています。このことと全国大会の参加団体が必ずしも多くない(増えない)こととは直接的に関係はないと思いますが、所在地の支部を通じてエントリーすることになっています。

北海道支部:札幌・旭川・函館・室蘭・小樽・帯広・釧路・北見  各合唱連盟
東北支部:青森県・秋田県・岩手県・宮城県・山形県・福島県  各合唱連盟
関東支部:茨城県・栃木県・群馬県・埼玉県・千葉県・神奈川県・新潟県・山梨県・静岡県  各合唱連盟
東京支部:東京都合唱連盟
中部支部:長野県・愛知県・富山県・石川県・福井県・岐阜県・三重県  各合唱連盟
関西支部京都府・滋賀県・大阪府・兵庫県・奈良県・和歌山県  各合唱連盟
中国支部:鳥取県・島根県岡山県・広島県・山口県  各合唱連盟
四国支部:香川県・愛媛県・徳島県・高知県  各合唱連盟
九州支部:福岡県・大分県・佐賀県・長崎県・熊本県・宮崎県・鹿児島県・沖縄県  各合唱連盟
     (太字は参加団体があった地域)


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 埼玉においても単独で遠方の大会に出られる団体はほとんどなく、ヴィヴ・ラ・コンパニーのようなある種の寄せ集め合唱団でなければ出場は困難といってよいでしょう。しかし、さいわいなことにヴィヴ・ラ・コンパニーは夏の全国大会以外にもいろいろ演奏する機会があって、ふだんから一緒に歌っている仲間なのでその点恵まれていると思います。

 前回の高知大会まで5回連続という最多参加だった大阪メールクワイアー(大阪)は今回欠場でした。合唱団京都エコー(京都)といわきメンネルコール(福島)が今回で5回目の出場、ヴィヴ・ラ・コンパニー(埼玉)とコール・ロチェアーノ(岡山)はそれぞれ4回目の出場となり、北海道男声合唱団は小樽市役所グリーとの合同ではありますが、今回で4回目の出場を果たしています。

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ヴィヴ・ラ・コンパニーお酒シリーズ
 今年のヴィヴ・ラ・コンパニーは、男の祭典に特化したお酒シリーズのプログラムでした。テーマソングである「Vive L’Amour」(ヴィヴ・ラムール)、「酒頌(しゅしょう)、「終電車のブルース」の3曲を披露しました。
 Vive L’Amour」は、バリトン須田信男さんのソロで歌いはじめ、二番は伊藤博行さんがソロをそれぞれ務めました。この曲は、伊藤博行さんが Vive l'amour, vive l'amour,Vive la compagnie!!以外の歌詞を日本語にし、楽しく歌えるようにしたカンパーイ!の歌です。「酒頌」は、アイルランドの詩人で劇作家のWilliam Butler Yeatsの詩 A Drinking Song” に上田真樹さんが曲をつけたもの、訳詞は林望さんです。
 「終電車のブルース」は、永六輔・いずみたくコンビによる男の哀歌、早く帰ればいいものを終電車に乗り遅れ、最後は函館線の小樽駅がねぐらとなります(‘;’)。落語家でコント作家でもある立川談らく師匠(横山努さん)、ご当地小樽出身の健治(あたらしけんじ)さん、宇佐美平和さんの三人による寸劇で、切なくも終電車を見送る酔いどれおやじたちを演じました(^_-)

 


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バッカス賞は、北海道大学と小樽市役所・北海道男声合唱団!
 前半と後半それぞれの出演団体の中からもっともアピール度が高かった団体に授与する「バッカス賞」は、講師によって選ばれます。清水敬一さんは、「溢れる泉は日々を巡り」(組曲『今でもローセキは魔法の杖』から)と「見えない縁のうた」(『遊星ひとつ』から)を演奏した北海道大学合唱団を選び、広瀬康夫さんは、「冬野」と「春秋」(組曲『尾崎喜八の詩から』から)を演奏した小樽市役所グリー・北海道男声合唱団を選びました。
 北海道勢は面目躍如というところですね。賞品は地元小樽の地酒でした!



清水敬一先生とヴィヴ・ラ・コンパニーの細田潤さん
細田さんは、清水先生も驚かれた『海鳥の詩』初版本を持っていました!


  



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     第6回全日本男声合唱フェスティバルを振り返って
大会実行委員会事務局 中村 浩  

 2008年、全日本合唱連盟の内部組織として浅井理事長直轄で設置された「新規事業委員会」の検討により、開催が実現した男声合唱フェスティバル。あれから10年後に地元小樽で第6回を開催するという想定はしていませんでしたが、第1回から大会委員又は出演者として参加してきた私自身が実行委員会事務局をお引き受けして実務も担当することで関係の皆様のご了承を得て準備を進めて参りました。

 合同合唱の講師と曲目の選定にあたっては、これまでの大会で参加者の満足度が高かったお二人の先生に、開催地にちなんだ曲をということで、清水敬一先生「海鳥の詩」、広瀬康夫先生「雪明りの路」が選定されました。両先生とも学生合唱団時代に歌われた曲目ですから思い入れも強く、土曜日午後3時間の練習は白熱し、冷房設備のない広瀬教室は「冬を味わう、夏」とはならなかったようです。


(左から)交流会司会・山崎甲子男さん、浅井敬壹・前全日本合唱連盟理事長、中村浩・大会副実行委員長

 参加者は、北海道9団体を含む17団体443(清水教室180名、広瀬教室263)。遠隔地である九州・四国からの参加がなかったのは残念ですが、第5回開催地の高知県連から中内事務局長が個人参加してくださったのは嬉しいことです。

 開会セレモニーでは、清原浩斗委員長が参加団体をご紹介くださり、その後の合同聴き合せで大会の全体像を把握して、300人が交流会場へタクシー移動。
 交流会の司会は、男声合唱団ススキーノの山崎甲子男さんにお願いしました。第1回の宮崎大会からご参加で大会事情にも詳しく、ご本業がコミュニティFMのプロデューサーですから見事な進行でパーティーは大きく盛り上がりました。

 一夜明けてフェスティバルの司会は、小樽市役所グリークラブの田宮昌明さん。オープニングで広瀬康夫先生と関西学院グリーで同期ということが紹介され会場が和みました。明るくスムーズな進行で、合同合唱を終えてみれば20分の余裕。昼食をゆっくりとることができました。

 各団体の単独演奏は、年齢層とレパートリーの幅が広く300名の一般入場者にも楽しんでいただけたようです。とりわけSTARGAZERのバーバーショップハーモニーの素晴らしさには大きな拍手が送られました。
 クロージングで発表されたバッカス賞は、清水先生から北海道大学合唱団、広瀬先生から小樽市役所グリー・北海道男声合唱団に贈られました。両先生の丁寧なコメントと全員合唱の盛り上がりで終演時間が少し遅れましたが、皆さん笑顔で会場を後にされました。
 ご協力いただきました出演者の皆さんに心から感謝申し上げます。ありがとうございました。



 さて、次回第7回は2018630日~71にかけて、静岡県伊豆の国市で開催されます。振り返れば伊豆の国市では、2013年に「関東おとうさんコーラス大会 in いずのくに」を開催しています。また、世界遺産となった歴史的な韮山反射炉を擁する場所でもあります。


〔関連資料〕

 1 全日本男声合唱フェスティバル in 宮崎  20101127-28
 2 全日本男声合唱フェスティバル in ふくしま  2012121-2
 3 全日本男声合唱フェスティバル in 岡山  20141129-30
 4 全日本男声合唱フェスティバル in 京都  201574-5
 5 全日本男声合唱フェスティバル in 高知  201679-10






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