彩の国男声コーラスフェスティバル2017



加 藤 良 一  2017年11月11日

 
 
 11月4日彩の国男声コーラスフェスティバル2017がウェスタ川越大ホールで行われました。ウェスタ川越は川越駅西口に2015年にオープンした、1,700席の大ホールです。駅から至近で、最新鋭の設備を駆使した次世代型ホールといわれ、クラシック音楽に適した豊かな響きをもつコンサートホールです。音響反射板をセットした時のステージとほぼ同面積のリハーサル室を併設しています。さらにその他の施設もいろいろあり、まさに使い勝手のよいホールです。その分だけ借りるのは容易ではありません。

 合同演奏は、参加各団からエントリーした合同の彩の国フェスティバル男声合団2017です。以下の2曲を採りあげました。講師は元埼玉県合唱連盟理事長・宮寺 さんと同前理事長・北川 さんのお二方でした。


  1.無伴奏男声合唱「酒頌・生のあなたの」より  「酒頌
     W.B.イェーツ原詩、林 望訳詩、上田真樹作曲     指揮:北川
   2.無伴奏男声合唱曲集「鷗・夢みたものは」より  「
     三好達治作詩、木下牧子作曲     指揮:宮寺

           

◇昨年(
2016108日、秩父ミューズパーク)は、彩の国フェスティバル男声合唱団を結成し山脇卓也さんをお招きして講習会形式を採り入れました。曲目は、今回と同じ「酒頌」ともう1曲、埼玉発祥の「旅立ちの日に」で、本番前日に事前練習も行いました。しかし、今年は参加団体の増加が予想されたことから、講習会による事前練習方式はやめ、(窮余の一策として、歌えることを前提に…)当日の合同演奏だけにとどめました。

     

◇演奏会で各団に与えられた制限時間は7分以内です。7分というと、けっこう選曲に迷います。制限時間いっぱいをフルに使った選曲から、安全をみて時間内に収まるように抑えた選曲までさまざまでした。今回は33団体の参加でしたので、仮に7分間隔としたらこれだけで正味231分になってしまいます。このままではフェスティバルの目玉であるもっとも重要な懇親会の時間に影響が出てしまいます。 さて、限られた時間の中でどうするか。そこで連盟事務局では一計を案じることにしたのです。それは、各団が申し出てきたバラバラの演奏時間をそのまま採用してしまうことにしました。即ち、7分以内と6分以内に分け、各団一律の演奏時間ではなく、団ごとに異なるタイムテーブルとしました。その結果、全体の演奏時間は少なからず短くなるという寸法です。とはいえ、リハーサルの時間はどの団も平等になるように配分しています。

◇当日は朝がやや早かったので遠方の団体には厳しかったかも知れませんが、945分開演、50分には各団ごとの演奏を開始し、午前午後の途中に5分間の小休憩を入れ、昼食の時間を45分とり、昼休みのあいだに合同演奏の練習を組み込みました。そして、33団体の演奏と合同演奏2曲も含めて午後245分に無事終演。その後、すぐに同じ建物内の多目的ホールへ移動し、3時頃には懇親会開催へと漕ぎ着けました。


男声合唱団ヴィヴ・ラ・コンパニーは今回も出演しました。ヴィヴコンはイベントごとに団長が変わります。今回はコール・グランツの加藤良一が担当しました

 演奏曲目:
  「
Vive L’Amour」(ヴィヴ・ラムール)
   Traditional
/訳詞:伊藤博行、編曲:Alice Parker & Robert Show
     指揮:南めぐみ、ソロ:須田信男、伊藤博行

  「終電車のブルース」(埼玉バージョン)
     作詩:永六輔/作曲:いずみたく

     指揮:須田信男、ピアノ:南めぐみ、

    コント:横山 努、新 健治、宇佐美平和、新祖 章、加藤良一、伊藤博行、横山岩雄

 1曲目「Vive L’Amour」は、夏の全日本男声合唱フェスティバルin小樽でも歌った曲ですが、今回はご当地ソングではなく正調(';')の歌詞で歌いました。指揮は常任(常連!)南めぐみさん(埼玉県合唱連盟常務理事)。新たに参加したメンバーにとっては練習時間が少なかったので譜面を外せない方もおられましたが、歌はしっかり歌い切りました。
 終電車のブルース」はデューク・エイセスが歌った埼玉に因んだ曲です。歌詞をどうアレンジするか、練習中にみんなでワイワイガヤガヤ言いながら出てきた結果が、西武線~東武線~東上線~秩父線~武蔵野線~埼京線~川越線とお馴染みの沿線が次々出てくるものとなりました。酔いどれピアノを南めぐみさんが弾き、須田信男さん(同常務理事)が歌いながら指揮をしました。

             

 落語家でもありコント作家でもある立川流の談らく師匠こと横山
さんの振り付け(?)による、終電車に乗り遅れた哀れな酔っ払いたちを演じたのは、談らく師匠 健治(あたらし けんじ)宇佐美平和のお三方。迫真の演技で聴衆を魅了しました……とさ。

高校生の男声合唱が3団体出場しました。埼玉からは県立浦和、川越、春日部、慶応義塾志木、熊谷の5校合同で編成する埼玉県高等学校男声合同合唱団として、100名がオンステしました。この合同合唱団は定期的に交歓しています。今回は組曲『月光とピエロ』より、「秋のピエロ」と「ピエロ」の2曲を演奏しました。いずれも高いレベルの技術を持った高校ですので、聴きごたえのある演奏でした。

ここでちょっと余談ですが、県立浦和高校は、今年10月、70回全日本合唱コンクール全国大会の高校部門Bグループ(33人以上)で最優秀団体として文部科学大臣賞を受賞し、さらにカワイ奨励賞も受賞し副賞にピアノを授与されています。浦高を指導しているのは、埼玉県合唱連盟理事長でもある小野瀬照夫先生です。男声合唱が最優秀賞となったのは極めてめずらしく、大変誇らしいことでした。おめでとうございます。県立浦和高校のサイトに次のような高校生の思いが掲載されていたので紹介します。

 男声合唱というと「パワー」とか「迫力」「力強さ」といったところにばかり目が行きがちではないでしょうか? 最近はその傾向も徐々に弱まってはいますが、例えば、男声合唱に於いて「繊細さ」とか「美しさ」をクローズアップしている人は、まだ「力強さ」などに比べると少ないように思えます。(……)
 高校生らしいアグレッシブな表現も大切ですが、
p(ピアノ)やpp(ピアニッシモ)のフレーズに垣間見える「本当に伝えたいこと」を表現したり、ひとつひとつのフレーズや曲全体に、人間らしさを感じさせる起承転結(音楽的に言い換えればデュナーミクやアゴーギク、アルシスとテーシスといったところでしょうか?)を加えたりといったものにこだわることも、音楽であり、芸術だと思います。

 
 大人の男声合唱陣として耳が痛い話です。しっかりと心に刻んでおきたいものです。
 
話題を戻します。
総勢7名で参加した八千代松陰高等学校合唱部(千葉県八千代市)は「宇宙戦艦ヤマト」「見上げてごらん夜の星を」を演奏し、埼玉県立川越高等学校音楽部は合同ステージとは別に単独でも出演し、組曲『柳河風俗詩』より、「紺屋のおろく」「梅雨の晴れ間」を歌い安定した歌唱力を披露しました。高校生諸君は大人の遊び場である懇親会には参加できないのが心苦しいところです。早く成人して戻って来ることを期待しています(‘;’)

講師が選ぶ特別賞は、「Sing Alone」と「Amzing Grace」を歌った洋光台男声合唱団(神奈川県横浜市)と「十三の砂山」と「おてもやん」を歌った男声合唱団みちくさ(埼玉県鶴ヶ島市)の2団体でした。洋光台男声は創立32年の歴史ある団体です。年季の入ったトーンを披露しました。みちくさは今回が初めての参加団体です。

            

◇懇親会の司会進行は、地元川越の男声合唱団イル・カンパニーレ団長、宇佐美平和(うさみ としかず)さんに中心になってもらいました。

        

 歌う曲は原則として男声合唱愛唱曲の中から選びます。あらかじめ各団と調整して選曲し、さらに指揮者も頼めるのかなど事前調整が欠かせません。成り行きで次は何を歌いましょうかとやっていたのでは、無駄な時間が発生し間が空いてしまいます。過去の経験から事前調整がすべてだと実感しています。



【関連情報】   「男声合唱大会の歩み 埼玉~関東~全日本」 




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