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彩美歌-ayamika-

CD発売記念コンサート 木下牧子をうたう vol.5




加 藤 良 一

2018116



 

 このコンサートは、木下牧子作品のCD録音を機に企画されたもの。彩美歌は、「木下牧子をうたう」と題するコンサートを2014年より開催しており、今年で5回目となりました。声楽メンバーの三人はいずれも東京藝大大学院の出身、ピアニストは桐朋学園大学の出身です。

 木下作品に魅せられた歌姫三人がこれまで大切に歌いこんできた曲をいよいよCDリリースするまでに漕ぎ着けました。彩美歌は、全国の学校などを訪問して演奏するとき、木下作品のア・カペラ曲となると一瞬にして会場の空気が変わるのを何度も経験しているといいます。それほど木下作品は全国の子どもたちから大人まで魅了してやまないのでしょう。

 彩美歌-ayamika-とは、四人の頭文字から名付けられたユニットの名前です。
          Soprano高嶋敦子の
          Mezzo Soprano木下泰子の
              〃      三宮美穂の
          Pianist千葉かほるの


          

 木下さんは、そもそも都立芸高ピアノ専攻へ入学したものの、2年次にはすでに作曲科に転じ、その後東京藝大作曲科に入学、本格的な作曲活動を始めています。30代で合唱や歌曲を手掛け、次第に管弦楽、吹奏楽、室内楽、声楽、オペラなど幅広いジャンルにわたって作曲しています。
 もともとピアノ志向であったことからか、最近では「ピアノへの回帰宣言」をして以来、新しい合唱曲は作曲されていないと思います。今回は、女声三重唱+ピアノ、ア・カペラ、ソロ演奏とさまざまな演奏形態が楽しめるプログラムでした。合唱曲を三重唱で聴くとまた違った雰囲気になります。合唱の柔らかなハーモニーとは異なり、各パートの動きが際立って作品の面白さを再認識する思いでした。


   1
   【三重唱】 「ファンタジア」より   木島始訳詩
    ・風をみたひと  C.ロセッティ作詩
    ・ジプシー  作詞者不詳
    ・重いのはなあに?  C.ロセッティ作詩
   【高島敦子】
    ・おんがく  まど・みちお作詞

   【木下泰子】 「愛する歌」より   やなせたかし作詞
    ・さびしいカシの木
   【三宮美穂】 「三好達治の詩による二つの歌」より   三好達治作詩
    ・物語
   【三重唱】 「地平線のかなたへ」より   谷川俊太郎作詩
    ・春に

   2
   【三重唱】 ア・カペラ
    ・サッカーによせて  谷川俊太郎作詩
    ・にじいろの魚  村野四郎作詩
    (なつめ)のうた  岸田怜子作詩
    ・ほたるたんじょう  くどうなおこ作詩
    ・グリンピースのうた  宮田滋子作詩
    ・夢みたものは  立原道造作詩
   【三重唱】 「自然と愛と孤独と」  E.ディキンスン作詩/中島 完訳詩
    ・夜明けがいつ訪れるかを知らぬばかりに
    ・太陽と霧が
    ・なんて柔らかに毛虫は歩くことか
    ・沼は秘密があって楽しいが
    ・小石はなんていいんだ
    ・悲しみのようにひそかに


 リサイタルホールはやや小ぶりの空間。聴衆と演奏者の距離が近く、ピアニストがペダルを放すかすかな音も聴き取れるほど。椅子は聴衆の入り具合に応じて並べる可動タイプのもので、やや固かったので終りの頃にはお尻が痛くなってもじもじしてしまいました。

 いずれ劣らぬソリストの集まり、三重唱では左からSoprano高嶋敦子さん、Mezzo Soprano木下泰子さん、同じく三宮美穂さんと並び、音取りは中央の木下泰子さんが小さくハミングで鳴らし、他の二人がそれに合わせるというやり方でした。
 素晴らしいハーモニーに息をひそめて聴き入りました。合唱ファンにとってはお馴染みの曲目もいつくか演奏され、木下ワールドを存分に味わうことができたコンサートとなりました。

 ロビーで、ファーストCD11月発売に先駆け、先行販売されていましたが、なんと品切れが出るほどの盛況となりました。アンケート用紙の裏側に住所を書いて出せば送るともいっていました。もっと用意すればよかったのに…。

 

       彩美歌-ayamika-公式ホームページ  http://ayamika.main.jp

 
 

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    【関連情報

      木下牧子作品展4 ピアノ・プラス ─ピアノ回帰宣言─
      木下牧子<もうひとつの世界>
      贅沢なコンサート “The Chorus Plus II
      〈現代音楽〉と〈現代の音楽〉 木下牧子作品展3 〔室内楽の夜〕


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