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そ の (しち)

7

加 藤 良 一

2020310



擾乱(じょうらん)の京都 新選組の暗躍

混乱を続ける政局


擾乱の京都 新選組の暗躍

混乱を続ける政局

 安政5(1858)、江戸幕府が欧米列強と締結してしまった不平等条約により、三百諸藩は鎖国状態のまま五カ所の港を開港するという屈服政策を攘夷派の志士たちが黙って見過ごすわけがなかった。一歩間違えば植民地化する危機に、有効な対策もとれずにいた孝明天皇に欠けていたのは情報の不足だった。なすすべがないまま、異母妹の和宮親子内親王(かずのみやちかこないしんのう)を十四代将軍徳川家茂(いえもち)降嫁(こうか)させる政略結婚に及び、政局は混乱の極致に達していた。

降嫁とは、日本では皇女皇族以外の男性に嫁ぐことを指す。
政権は本来天皇(朝廷)のものである。それが将軍に与えられて初めて幕府としての勢威が示せるし、幕府を尊ぶことはそのまま天皇を尊ぶことにも通じるものである。ところが、徳川幕府はその歴史のなかで必ずしも天皇家を重んじない政策も執るようになったため、幕府と天皇との間に次第に亀裂が入っていった。そこで、悪化した両者の関係修復に使われたのが即ち政略結婚である。


・八月十八日の政変  文久3年(1863)8月18
 公武合体が、それまで優勢であった尊攘派を京都から追放、実権を掌握した事件。長州勢中心の尊攘派は孝明天皇大和行幸を機に天皇を擁して討幕軍を起こす計画を立てていたが、これを知った薩摩島津久光らは会津および久邇宮朝彦親王(くにのみやあさひこしんのう)ら朝廷内の公武合体派と結び、突如御所を軍勢で囲んで行幸を中止させ尊攘派公卿志士らを追放した政変。
(堺町御門の変、文久の政変ともいう)

公=公家すなわち京都の朝廷
武=武家である江戸幕府
朝廷と幕府の合体は、本質的には古来より朝廷が日本統合の権威的象徴であり、権力を掌握した幕府がその統治権を正統化して支配体制を強化する目的で朝廷の権威を制御しつつも利用しようとしたことにはじまる。江戸幕府は、それゆえ他の大名が朝廷に直接関係することを嫌い、朝廷が反幕勢力の拠点とならないようもろもろの制度を設け、表面的には朝廷を尊崇するように見せかけていた。幕府は形式的には朝廷から与えられた形で宣下(せんげ)天皇の命令を伝える公文書を公布すること)を行っていた。


・池田屋事件 元治元年(1864)6月5日

 京都三条木屋町(三条小橋)の旅館池田屋に潜伏していた長州藩・土佐藩などの尊王攘夷派志士を、京都守護職配下の治安維持組織である新選組が襲撃した事件。
(池田屋事変、池田屋騒動ともいう)

明保野亭(あけぼのてい)事件 元治元年(1864)6月10
 江戸幕府より池田屋事件の残党捜索を命じられた新選組が、京都東山の料亭明保野亭に潜伏していた長州系浪士の探索活動中に偶発した土佐藩士傷害・切腹と、それに伴う会津藩士の切腹事件。
 明保野亭は料亭と旅宿を兼ねており、倒幕の志士たちの密議の場として利用されていた。また、土佐の坂本龍馬の常宿の一つといわれている。

禁門の変 元治元年(1864)7月19
 京都で起きた武力衝突事件。八月十八日の政変により京都を追放されていた長州藩勢力が、会津藩主・京都守護職松平容保(かたもり)らの排除を目指して挙兵、京都市中において市街戦を繰り広げた。
(蛤御門の変、元治の変ともいう)

ぜんざい屋事件 慶応元年(1864)1月8
 土佐勤王党の残党四人が大坂南瓦町のぜんざい屋に潜伏し、店主石蔵屋政右衛門らと大坂城乗っ取り計画を企てていた(らしい)が、それを察知した新選組が襲撃した事件。

三条制札(せいさつ)事件 慶応2(1865)9月12
 三条大橋西詰北の制札を引き抜こうとした土佐藩士新選組が襲撃・捕縛した事件。

制札とは、高札のひとつで特定の相手や事柄を対象として制定された法令を記した掲示。高札は、古代から明治時代初期にかけて行われた法令を板面に記して往来などに掲示したもの。

油小路(あぶらのこうじ)事件 慶応3年(1866)3月10
 新選組を離脱した伊東甲子太郎(かしたろう)が、新選組局長近藤勇を暗殺しようと企んでいたことが新選組に漏れ殺害された事件。新選組最後の内部抗争にあたる。

天満屋(てんまや)事件 慶応3年(1866)127
 海援隊士・陸援隊士らが京都油小路の旅籠天満屋を襲撃、紀州藩士三浦(やすし)を襲い、新選組と戦った事件。

勤皇:天皇のために働くこと。尊王より積極的な行動を伴う。
尊王:天皇を敬うこと。倒幕派、佐幕派いずれにも共通する考え。
佐幕:幕府を(たす)ける。つまり幕府支持の立場。
倒幕:幕府を倒すこと。
討幕:幕府を攻撃すること。必ずしも幕府が倒れるかどうかは問わない。
攘夷:夷敵(いてき)(はら)う。野蛮な外国人を追い払うという意味。

 

(つづく)


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【 公 演 】
2020年5月23日(土)
2021年2月6日(土)

深谷市民文化会館 大ホール

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