雑感 令和2年(2020)



7/25 コロナ禍の図書館 それでもベートーヴェン企画展開催
6/4 新型コロナウイルス感染症 【6】
 分かりにくい新聞記事
5/24 新型コロナウイルス感染症 【5】
 PCR検査の精度とは…
5/21 新型コロナウイルス感染症 【4】
 新型コロナ対策 4カ国Webミーティング アジアに学ぶ日本の出口戦略
5/20 雑感アーカイブ【2002年12月】
 男声合唱プロジェクトYARO会発足

5/16 新型コロナウイルス感染症 【3】
 《6》 PCR検査、目詰まり深刻、ようやく12万件体制
5/14 新型コロナウイルス感染症 【2】
 《4》 PCR法は何が優れているのか、弱点はないのか?
 《5》 PCR法の感染症への適用
5/13 新型コロナウイルス感染症 【1】
 《1》 正確な感染状況が知りたい
 《2》 PCR検査が増えないボトルネックはどこか?
 《3》 富士レビオの抗原検査キットが承認された




7/25 コロナ禍の図書館 それでもベートーヴェン企画展開催
埼玉県立久喜図書 生誕250周年記念「楽聖ベートーヴェンの音色と、その生涯
 久喜図書館では、年間を通していろいろな企画展を開いています。6月2日から7月30日まではベートーヴェンの生誕250周年に合わせて、図書室に関連資料の展示コーナーを設け、視聴覚ホールではCD鑑賞会を行っています。一向に衰えを見せないコロナ禍、図書館の熱意とは裏腹に訪れる人もまばらです。
 図書室入り口のいつも新刊などを展示しているコーナーに、ベートーヴェンにまつわる書籍やCD、レコードなど200点ほどを集め分かりやすく展示、貸し出ししています。レコードはさすがにジャケットを眺めるだけでしたが、書籍は手に取って拾い読みし何冊か借りてきました。CD鑑賞会は、「ベートーヴェンの調べ 苦悩を突き抜け、歓喜に至れ」と題して、ピアノソナタ「悲愴」、ピアノ協奏曲「皇帝」、交響曲第9番が流されました。

久喜図書館は、自然科学、技術、芸術、言語、文学を担当。
熊谷、浦和と専門分野を分けている。
使用可能なロッカーは半分以下に…
カウンターも厳重に封鎖! 通路も入り口と出口が分けられているが、そんなことお構いなしのおじさんが出口から入って行く…。ダイヤモンドプリンセス号のエリア分けと同じか!

 借りてきた一冊<音楽現代>7月号では、特別企画「新型コロナウイルス禍の音楽界 ~その“現状”と“これから”」が組まれていました。公益社団法人 日本演奏連盟理事長の堤 剛さんの寄稿「新型コロナウイルス蔓延の現下の演奏界、演奏家の状況について」では、将来より素晴らしい芸術活動を繰り広げるために基盤作りのお手伝いをするため、『文化芸術復興基金(仮称)』の設置を政府や文化庁に求めるとしています。これは、超党派の国会議員で組織された文化芸術復興議員連盟により3月23日に緊急決議されたものです。
 フリーランスの演奏家(個人)に対する支援をはじめとして、臨時休校で閉鎖された学校で影響を受けた子どもたちのための保護者支援や、事業者向けの資金支援などを行います。




6/4 新型コロナウイルス感染症 【6】
分かりにくい新聞記事
 先日、読売新聞社会面に<『コロナ最前線』@PCR検査機関>と題する記事が掲載されていました。
 見出しは『1滴に集中 精密判定』、中見出しに『検体3ミリ間隔で配置』。


 名古屋市衛生研究所の検査現場を取材したものです。主な内容は、スマートフォンほどの大きさで96個の小さなくぼみがあるプレートに検体を入れること、続くPCRの簡単な説明、検体処理能力が時と共にどう変わってきたか、感染第2波に備え体制を固めていることなどを紹介しています。
 そこで気になったのが『1滴に集中 精密判定』はなんとなくわかるとして、『検体3ミリ間隔で配置』は96穴のマイクロプレートのウェル(穴)の間隔を指すと思われますが、一般の人がすんなりと飲み込めるのでしょうか。
 余計なことかもしれませんが、社会面に載せるにしては言葉が足りないと思うし、独りよがりの気がしないでもありません。読者は首を捻りながらもスルーするのでは…





5/24 新型コロナウイルス感染症 【5】
PCR検査の精度とは…
 これまで、感染者との濃厚接触履歴があり、かつ発熱などの症状のある場合に限ってPCR検査が行われてきました。これに対しては、検査が受けられずに重症化し、短期間に死に至ったケースもあり、多くの疑問の声が上がっています。では、検査はどのようにすれば適切なのでしょうか。
 その前にというか、PCR検査を考える前に「検査精度」について確認しておかねばならないことがあります。
 
 検査の理想は、「陽性」なら感染者、「陰性」なら非感染者、と単純に分けられれば何も問題はありません。しかし、実際にはそう簡単にはいきません。本当は感染しているのにPCR検査では陰性になったり、たとえ陽性でも感染していない場合が出てきてしまいます。
 検査精度、つまり検査の良否は、感度Sensitivityと特異度Specificityという二つの観点から評価し、診断の尺度にします。

検査結果

疾患あり

疾患なし

陽性+

真陽性(a)

偽陽性(b)

陰性-

偽陰性(c)

真陰性(d)


感 度=a/a+c

疾患のある人のうち陽性となった人の割合
⇒真陽性率

特異度=d/b+d

疾患のない人のうち陰性となった人の割合
⇒真陰性率

精 度=(a+d)/(a+b+c+d)

繰り返し測定したときにどれだけ同じ結果が出るか
⇒陽性的中率

 
例えば、下の図のようなCOVID-19クラスターが発生したグループがあったとします。

  


◉特徴的な症状や検査値などの所見がある人が「a」で、その割合が感度です。

◉病気にならない人の中で所見のない人「d」の割合が特異度です。

【感度について】
 実際に当てはめて考えてみると、感度が高い検査法で陽性になれば病気の確率(真陽性率)が高いということになりますが、逆にいえば、陰性のときは病気でない確率が高いとなり、陰性と判断するのに有効です。
 なぜ陽性の確定に有効と言わないのか、それは次のように説明されます。その検査法が病気の人を良く探し当てる、つまり検出能力が高いということは、逆説的ですが、探し当て過ぎる能力があるとなります。そんなに能力が高い検査法をもってしても探し当てられないなら、病気ではない、陰性であると強く言えるというわけです。

【特異度について】
 感度とは反対に特異度が高い検査法は陽性のときに有効です。特異度が高ければ病気でない人が陰性でないとなる確率が高くなり、言い換えると陽性となる確率が低くなります。従って、その検査法で陽性になれば病気である可能性が高いことを示され確定診断に適していることになります。

【精度について】
 精度AccuracyPrecisionとは、検査の陽性的中率で、繰り返し測定したときにどれだけ同じ結果が出るかということです。病気のときは陽性、そうでないときは陰性という二つを合わせた割合で、式(a+d)/(a+b+c+d)で表します。




5/21 新型コロナウイルス感染症 【4】
新型コロナ対策 4カ国
Webミーティング アジアに学ぶ日本の出口戦略

 52020:0021:301時間半にわたりCareNet.com主催のオンラインセミナーを聴きました。以下にその時の様子を記載します。但し、トークミーテイングをそのまま書き出しているので多少話が飛んだりします。

講師:生協浮間診療所 所長 藤沼康樹氏(日本)
    北京ユナイテッドファミリーCBDクリニック 本山哲也氏(中国)
    ファミリーメディカルプラクティス ハノイ 千葉大氏(ベトナム)
    ラッフルズジャパニーズクリニック 林啓一氏(シンガポール)

 緊急事態宣言が一部解除され、新型コロナウイルスパンデミックがようやく次のステージに移行しつつある現在、経済、医療、生活をいかに平常に戻していくか、いわゆる"出口戦略"が日本における喫緊の課題になっています。
 国によって感染状況、検査等の医療体制、感染拡大防止のための政策は異なります。比較的日本に近く、日本より半歩進んでいると考えられる、アジアの国々で診療を行っている日本人医師に、それぞれの国の状況を聞き、日本のこれからの方向性を考えるWebミーティングでした。中国の医師はかなり言葉を選んで発言していると表明していたし、実際監視されていると思われます。

【各国の現況】
本山(中国):4/16以降感染者が出ていなかったが、現在また少しずつ出てきた。

千葉(ベトナム):1月末の旧正月以降隔離政策がとられ、学校は14週続けて休みのまま。3月以降感染者は増えていない。4/1から2週間隔離政策がとられた。今は落ち着いている。

林(シンガポール):日本に似ている。中国からの持ち込みでクラスター発生、隔離政策実施。3月でも学校はやっていた。ホームベースドラーニングが中心。6月から学校が始まる。一般の市井の医師はコロナの診療ができないことになっている。オンライン診療は可能。シンガポールの感染データは透明性が高いので国民は安心している。

【感染予防】
藤沼(日本):日本独特と思われる三密回避で自粛政策がとられている。外出ができない。テレワークが推奨されている。同調圧力が問題になっている。マスク・手洗いは徹底されている。風邪症状は4日間自宅待機とされているが、これが効果的だったかもしれない。

本山(中国):マスクは多くの人がやっていて意外とルールは守られている。農村部ではドローンによって行動が監視されている。日本人の方が緩いのではないかと思うことがある。同調圧力というより政府の言うことは聞かねばならないという雰囲気がある。発熱外来は一般の病院では扱えない。

千葉(ベトナム):ベトナムは昔からバイクが普及しているのでマスクに抵抗はない。きめ細かい政策が出されるので国民はよく守っている。意識は高い。エレベータのボタンにはラップが被せられ、それも頻繁に交換されている。衛生観念は日本とは違うがよくなってきている。ハノイでは病院でクラスターが発生した。

林(シンガポール):シンガポールは東京23区ほどの大きさで規模が小さいためか、マスクはすでに3回目が支給された。以前は、マスクは病人がするものと思われていたが、CDCWHOの勧告を受けて着用するようになった。同調圧力というより従わないと罰せられる。スマホの動画アップサイトで行動が常に見られている。エレベータなどは第四級アンモニウム塩(ベンザルコニウム塩化物)で消毒することがある。一度掛かった病院以外で受診することはできない。韓国のようにGPSデータで監視はしない。

【メディアの対応】
藤沼(日本):日本では書くメディアがそれぞれの立場を強調しすぎて情報が混乱している。

本山(中国):政府の監視下にあり自由な報道はできない。

千葉(ベトナム):ベトナム語がわからないのでテレビはあまり観ていない。日本とちがってワイドショーのような番組は少ない。FacebookやベトナムLINEが普及しておりそれで情報を確認している。フェイクニュースはすぐに罰せられる。「中国では人民が共産党を恐れているが、ベトナムでは共産党が人民を恐れている」

林(シンガポール):与党がSNSを握っている。情報は随時政府から出される。

PCR検査・診療現場】
本山(中国):PCRは発熱があれば医師の裁量で受けることができる。それ以外で希望者の検査は富裕層が主に受けている。

林(シンガポール):PCR12万件やろうとしている。4月以降行われている抗体検査は感度が低いから診断には使わないよう指示が出ている。ナーシングホームなどでは、5人分の喀痰を一つにプールしてPCR検査を実施している。幼稚園が始まる前に検査をやることになっている。

千葉(ベトナム):疑わしい場合には検査するが、以前は2か所しか対応できる施設がなかった。市井の病院で疑わしい患者検体を送ろうとしても患者を連れてくるよう指示される。韓国人や日本人のコミュニティでは感染を心配する声が特に強く、外出したがらないし学校も拙速に開かないでほしいと要望している。

藤沼(日本):陽性率が下がってきているが、全体的にフレイル状態というか虚弱になっている気がする。

千葉(ベトナム):コロナ前後に単身赴任してきた日本人は体調不良を訴えることが増えてきた。慢性コロナとでもいうべきか鬱症状が目に付くようになってきた。

本山(中国):患者は半分くらいに減ったが、別の体調不良を訴える患者が増えてきた。

林(シンガポール):プライマリケアの患者は減っており、医師の仕事は減った。忙しい病院へ手伝いに行っている。緊急を要しない手術は減っている。

本山(中国):日本は強制しない方法でよく感染拡大を抑え込んでいるとみている。中国に近いからか。中国で1/6に原因不明の肺炎が出たと報道、1/7に新型ウイルス感染症と発表を受け、日本では1/16という早い段階で対策を始めたのが功を奏したのではないか。

千葉(ベトナム):人民委員会の発表は国民の反応を常に意識しているが、リテラシーの問題もありやや伝わりにくい。日本は国民への伝わり方はよいと思う。

林(シンガポール):日本は強制力のない方法で抑え込んだのはすごい。しかし、学校をいきなり休みにしたのは疑問である。個人用防護具(PPEPersonal protective equipment)はとくに不足していない。日本からの入出国は止められている。その点は日本の規制は緩く信用度は弾くと見られている。

藤沼(日本):臨時往診で老人の嚥下テストでせき込んで医療者が浴びてしまい、あとでPCR陽性となると医療者は14日間仕事ができないケースがある。現在クラスターは病院や施設が中心で、地域流行させていない。但し医療用ガウンが中国依存しているため入手が困難になっている。

本山(中国):中国でも当初医療用具は不足したが、今は問題ない。

千葉(ベトナム):マスクは一時期不足したが国内で生産しているので今は足りている。日本ほど深刻ではない。消毒剤は不足したことがあった。

林(シンガポール):消毒剤が不足した時期はあったが改善している。

千葉(ベトナム):ベトナムに介護という概念がなく、老人はまず病院へ行く。富裕層中心に介護施設を求める声が出ている。病院でクラスターが発生すると病院丸ごと2週間閉鎖してしまう。

本山(中国):中国でまた発生したら同じやり方で対応すると思う。ロックダウンなどは行政単位ごとに行われるので不自由だが分かりやすい。

林(シンガポール):日本には帰りたくないという人が多い。個人ID600ドル)がないとショッピングセンタにも入れない。IDがあれば自販機でマスクが買える。

【ポストコロナ・ウイズコロナ】
藤沼(日本):問題は冬である。別の感染症との区別をしながらの対応が必要になる。

本山(中国):検査のキャパシティは足りている。日本はCDCのような組織を作るべき。中国はSARSのときに作った。

千葉(ベトナム):日本は無駄なことが多いように見える。専門家会議の位置付けが大事である。ベトナムではリアルタイムアプリに感染情報が速やかに出る。

林(シンガポール):IDのデータ漏洩があり大問題になった。個人の電子健康記録(EHRElectronic Health Record)にGPSは使っておらずBluetoothでつなぐだけである。しかし、これは4割以上の人が常に作動していないと機能しない難しさがある。

藤沼(日本):マーナンバーカードと運転免許証などで本人確認をする方向だが、高齢者の対応が困難である。昭和レガシーがある。今のうちに標準予防策を策定し、将来の医療体制に備えねばならない。



5/20 雑感アーカイブ【2002年12月】 男声合唱プロジェクトYARO会発足
 (今は掲載を取りやめた過去の『雑感』から掘り起こしてアーカイブします。)
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 今年の夏、新潟で開かれた関東おとうさんコーラス大会で持ち上がった話しがついに実現する運びとなった。比較的小さな合唱団同志がジョイントし、いつもはなかなかできない大人数での演奏をやりたいという話しである。大学のグリークラブなどではよくジョイントがみられるが、社会人の団としては珍しいにちがいない。

 問題はいくつかあるが、とくに演奏時間をどれだけ短くできるかが課題である。1回のステージで5団体それぞれの演奏と、メインの合同演奏をこなすにはかなりの時間が必要になる。各団20分ずつに絞ってもそれだけで1時間40分かかり、そこへ合同演奏やアンコールを加えると正味で軽く2時間を超してしまう。
 聴衆に負担にならないていどの時間としては、どうみても2時間30分が限度。ここでむずかしいのが各団の選曲、まとまった演奏をしようとすると、どうしても20分でおさまるものは見当たらない。ぎりぎりの選択として、短めの組曲の一部を割愛するとか、あるいは小さな曲を寄せ集めてオムニバスとするなどになってしまう。各団の特色をいかに出すか、選曲のよしあしも見ものである。

 合同演奏曲は、指揮者の小髙秀一氏の意向も聞きながら関係者で調整した結果、多田武彦の『富士山』と決まった。見方によっては何の変哲もない曲ということかもしれないし、いややっぱり富士山でなくっちゃだめだという思い入れのある人も多いことだろう。最初のジョイントコンサートとしては、とりあえず落ち着くところへ落ち着いたという感じである。たぶん2回目以降は、またちがった方向で曲が選ばれることになろう。



5/16 新型コロナウイルス感染症 【3】
《6》 PCR検査、目詰まり深刻、ようやく12万件体制
 厚生労働省は5月15日、新型コロナウイルス感染のPCR検査について、1日当たりの検査能力が約22千件に達したと発表。感染が疑われる人が検査を希望しても受けられないとの不満が相次ぎ、4月時点で、「12万件」を目標に体制強化を掲げていましたが、ようやく体制が整ってきた感があります。

 PCR検査は国立感染症研究所や検疫所、民間企業、大学などに機器があり、1日に検査可能な件数は513日時点で19420件でしたが、15日に民間で新たに2640件の検査が可能となり、全国で22千件を超えました。 国内の検査体制をめぐっては、諸外国と比べて件数が少なく、感染の実態がつかめないと指摘されていたほか、検査を受けられないことで入院が遅れ、最悪の場合死亡した例まであります。

 いっぽうで、今日の日経新聞には、「保健所逼迫」「医師が要否判断」「検体採取に制約」とまだ体制が不十分と報じられています。保健所が運営する「帰国者・接触者相談センター」を経ずに、直接検査が受けられるようにと開設した「PCRセンター」も予約制で、かかりつけ医の紹介が必要なケースもあるといいます。



5/14 新型コロナウイルス感染症 【2】
《4》 PCR法は何が優れているのか、弱点はないのか?
 PCRPolymerase Chain Reaction:ポリメラーゼ連鎖反応)は、1983年に発明された核酸を増幅する遺伝子検査法。DNAサンプルから特定領域を数百万〜数十億倍に増幅できる技術です。そのステップは、酵素DNAポリメラーゼを使って、一連の温度変化のサイクルを経て目指す遺伝子領域やゲノム領域のコピーを指数関数的に連鎖的に増幅することで、微量のDNAサンプルから検出可能な量にまで増幅します。発明以来、その有用性が広く認められ、それまで検査が困難だった病気への適用がなされてきました。

 PCRが使われる検査には、例えば、遺伝性疾患を調べる<遺伝学的検査>、造血器腫瘍、肺癌EGFR遺伝子変異を調べる<体細胞遺伝子検査>、そして今回の新型コロナウイルス感染症のような<病原体遺伝子検査>があります。病原体については、BC型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルスなどの検査が以前より行われています。

 遺伝子検査のメリットは、迅速に正確な結果が得られることです。しかし、新型コロナウイルス感染症のようにすぐその場で検査できないと患者の扱いに窮するというような場合に対応するほど速くはありません。また、他の検査法と比べてコストが高いことも普及を阻んでいます。従って、コストパフォーマンスからみて、速く見つけても治療法がない検査には有効性が発揮しにくくなります。また、結核のように進行が極めて遅い病気の場合、PCR検査で迅速に結核菌を検出したとしても、さらにではどの薬剤が効くかは別途感受性試験をやらなければならないこともメリットがない理由になります。
 いっぽう、PCRの弱点は、検出できないようなわずかな遺伝子でも検出可能なまでに増幅しますので、検体採取から機器に掛けるまでに、ほんのわずかな汚染や他の検体の混入などがあっても正しい結果は得られません。測定機器自体は全自動化されていますから、検体をセットしてしまえば、あとは反応が終了するまで待っていればよいのですが、セットに至るまでに熟練の技術を要する面があります。これが、なかなか一般化しにくい部分です。

《5》 PCR法の感染症への適用
 ここでは、感染症に絞って話を進めます。微生物検査の中で最も古典的かつ方法論が確立しているのは、赤痢やコレラのような細菌検査です。細菌は培養が比較的簡単で、大掛かりな装置もいらないため早くから検査法が確立しました。但し、嫌気性菌といわれる普通の空気環境では増殖しにくい菌は、やはりちょっとした培養環境が必要になります。

 ウイルスは細菌よりずっと小さく光学顕微鏡では検出できないため、その発見がかなり遅れました。最も古い記述では1892年のタバコモザイクウイルスがあります。ヒトの病気では黄熱ウイルスが最初です。
 さらにウイルスの検査を困難にしているのは、いうまでもなく自己増殖できないからです。細菌はエサさえあれば、どこでも増殖することができますが、ウイルスは、生きた動物の細胞(宿主)に入り込んで、つまり寄生して増殖するという、生物か生物でないか判然としない生き物!です。相手の力を借りるので、相手が死んでいてはダメなわけです。 パラサイトのように共生するのではなく、宿主の細胞に入り込んで破壊してしまいます。



5/13 新型コロナウイルス感染症 【1】
《1》 正確な感染状況が知りたい

 新型コロナウイルス感染症は、201912月中国湖北省武漢市で発生した原因不明の肺炎患者から検出された新種のコロナウイルスに端を発しています。
 新型コロナウイルスは「SARS-CoV-2」と名付けられました。2020211日、WHOは新型コロナウイルス感染症の正式名称を「COVID-19」と定めています。これはCoronavirus Disease 2019ということです。WHOがスペイン風邪のように武漢という地名を使わなかったのは、中国から高額の資金を貰っているため遠慮したのではないかという憶測はとりあえず置いておくとしましょう。

 日本国内における武漢渡航歴のない最初の患者は60代男性で、1X日に悪寒、咳、関節痛が出現し、3日後に医療機関受診、各種検査異常なく経過観察していたが、症状が増悪したため、11日目に再度医療機関を受診したところ、胸部レントゲン検査で肺炎の所見を認め入院しました。この患者は業務上、武漢市からの旅行客とツアーで接触していたため、新型コロナウイルス感染症を疑い検査したところ、14日目にSARS-CoV-2陽性と判明しました。その後、日本中に蔓延したことを受け、ついに非常事態宣言が出されて外出自粛となり、現在に至っていることは周知の通りです。
 国民は感染状況の推移が大変気になるわけですが、511日の東京都の発表を聞いて驚いたのは私だけではないと思います。

  「東京都、新型コロナウイルス新規感染15人、保健所からの報告漏れで過去発表分に76人増に

 新規感染15人だったのはわかったとして、過去発表分を修正するとはどういうことでしょうか。かなり混乱しています。最も重要な感染者数のデータ集計システムがいまだに確立していないというのです。
 保健所からの報告を集計する作業で、111人の報告漏れと35人の重複があったことが判明し、全体の感染者の数が76人増えることを明らかにしたのです。
 患者数の急増で、保健所における相談や調査、検体搬送などの業務が増大したため、都への報告に支障が出たとの説明です。都への発生届けは、紙ベース、つまりExcelなどに入力プリントアウト→FAXでやっています。受けた方はそれを統括する様式Excelなどに転記入力しているのだと思います。患者の入退院情報を入力する共通のデータベースのようなものはないようです。
 近代的な医療システムとは裏腹に手作業での報告システム。患者が発生してからもう3か月にもなるのに、と歯がゆい思いがします。そんなに難しいことではないはず、要はやる気があるかどうかです。人手が足りないというなら、臨時に職員を雇えばよいのです。オリンピックを否定はしませんが、そこへ膨大な予算をつぎ込む余裕があるなら、国難ともいわれるこの緊急時にこそ予算を投入すべきです。  

《2》 PCR検査が増えないボトルネックはどこか?
実際に使える検査機器が少ない
 相変わらずPCR検査件数が増えない問題が解決しません。体調がおかしくなって新型コロナウイルス感染症が心配だから検査してほしいと保健所に申し出ても、条件を満たしていないと断られ、その結果重症化して命を落とした症例も出ています。現に今日も若い相撲取りが検査を受けられずに重症化し、最後は集中治療室から出ることなくなくなっています。

 PCR検査が増えないのはいったいどこに問題があるのでしょうか。検査試薬業界の仲間に現状をどう捉えているか聞いてみたので、整理してみます。
 いくつか要因はあるようですが、一つは「実際に使えるPCR検査機器」の台数が不足していることがあげられています。そこから派生して、一日の検査数がキャパシティを超えないように、また、感染防止の観点から医療機関受診を控えようとしているところがあるのではないか。ただし、「実際に使える」というのは、機器の実数ではありません。日本中には大学や研究所で眠っている機器がたくさんあるといいます。さらに、検査できる施設・設備が限られていることも大きな要素です。PCR検査はかなり感度が高いので、周囲からの汚染の影響を受けやすく熟練した手技に加え、検査する部屋もそれ相当の設備でなければなりません。

 また、保険適用となり、国立感染症研究所が作成した「病原体検出マニュアル2019-nCoV」に記載された試薬もしくはそれに準じた試薬または承認を得た体外診断用医薬品を使用することになり、使用できる試薬はその都度Q&Aとして公表されています。現在10種類ほどが公表されています。保険適用によって使える試薬が増え、検査センター等でも検査できるようになったのですからこれから増えてくるはずです。もともとは公的検査として新型コロナウイルスの研究目的でPCR 検査が行われていたわけであり、現時点でもその影響が残って検査センター等への検体の流れが悪くなっているのではないかともいいます。

《3》 富士レビオの抗原検査キットが承認された
 今日(5/13)、富士レビオが「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)抗原検査キット」の製造販売承認を厚労省より取得しました。これは酵素免疫測定法とイムノクロマトグラフィの組み合わせで作られた簡易テストです。

 イムノクロマトグラフィの原理は、セルロース膜などの上を被検体が試薬とともにゆっくり流れる毛細管現象を応用したものです。この方法自体はかなり以前からあるものです。
1.膜の一定の箇所に目的とする抗原なり抗体なりを塗布して乾燥させます。(目的に応じて抗原抗体どちらでも可能です)2.膜の端に被検体を垂らして拡散させます。
3.被検体の中に抗体あるいは抗原があれば、酵素と反応して発色した線が肉眼で見えるようになります。

 現在、PCR検査が進まない中、簡易に短時間で診断できるメリットが高く評価されています。富士レビオには友人がたくさんいるので、お祝いをしてあげたいくらいですが、自粛要請で外に出かけることができません…(-.-)

 この検査法は簡便ですが、弱点もあります。それは感染しているのに検出されない偽陰性」が出ることです。その場合は、別途PCR検査で確定する必要があります。それにしても、今回の厚労省の製造販売承認の審査期間が如何に短かったか、おそらく記録に残る驚異の短さでした。




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